【プロの視点】第8回『投資用太陽光のFIT価格14円へ』〜太陽光投資の見通しと20年後の出口戦略について

2019年は年明けそうそう太陽光投資に関わる人達に衝撃が走りました。1月9日に公になった経済産業省の「調達価格等算定委員会」の委員長案で、10kW以上500kW未満の太陽光発電のFIT価格が14円という価格が提示されたからです。ご存知のとおり2017年度が21円、2018年が18円。その下落幅が15%弱だったことを考えて、多くの人が2019年度は15円になるだろうと予測していたでしょう。
では、FITが14円になったら太陽光投資はどうなっていくのか。それについて株式会社メディオテックの代表取締役 松本秀守と、太陽光投資物件の販売を担う営業二部・弓削雄一部長にインタビュー形式で「表面利回り」についてと「太陽光投資の出口戦略」について語っていただきました。
すでに運用中の方は運用方針が、これから太陽光投資を始める方は投資の見方が変わってくるでしょう。ぜひ参考になさってください。
※このページ内に表記しているFIT価格はすべて税抜表示です
目次
両者 プロフィール
代表取締役 松本秀守
多くの営業職を経験したのち独立し、戸建住宅の電気設備工事請負会社として社を立ち上げる。家電量販店工事請負や、ネット専業の住宅設備工事サイトの「棟梁ドットコム」の運営などを経て、2009年から太陽光発電システムの販売を開始。HEMSや投資用太陽光遠隔監視システム「エナビジョン」の開発製造も行う。この春から新たな電力事業も展開する(詳細は次回記事にて)。
営業二部部長 弓削雄一
1978年神奈川県座間市生まれ。医療福祉系総合商社、外資系たばこメーカー、AV総合販売企業を経て、2016年4月に入社。様々な分野に取り組んだ経験を活かし、1年間は法人様への電力計測機器の卸・販売部門を担当。2017年4月からは、主に投資用の太陽光・風力の販売部門に従事。
2019年度、太陽光FITが14円で確定したらどうなるのか?
Q:FITが14円に下がることに関して、率直にどのような印象をお持ちですか?
松本社長
弓削部長
Q:物件価格が以前と比較して下がってきていると、ローンが通りやすくなるというような現象が起きてくるのでしょうか?
弓削部長
Q:では、メディオテックで太陽光投資物件の販売を継続していく理由は、どのような点があるのでしょうか?
松本社長
Q:弓削部長は売り手として14円に下がっていくことで、お客様に販売しずらい状況になっていくのでしょうか?
弓削部長
弓削部長
太陽光投資を取り巻く環境も大きく変化していく
Q:さきほど政府の指針についての話がありましたが、2030年までに太陽光の比率を現状の5%から、2%上積みして7%にすることを目標としていました。FIT価格が下がっていくにも関わらず、目標値を上積みするという矛盾に関しては、どのように考えますか?
松本社長
松本社長
(*1) PPA契約とは?
Power Purchase Agreementの略。需要家(=電気を買って使っている一般家庭や法人)に電気を売る事業者と発電所をもっている事業者間で締結される電力販売契約のこと。
インタビューの例で例えると、「ふくのしま電力」と「太陽光投資家の発電所」との間で「PPA契約」が結ばれ、「ふくのしま電力」が契約している「需要家」に電気を売るために、「契約した太陽光投資家の発電所」から電気を買うという図式。
(*2)ふくのしま電力とは
メディオテックグループの会社で、「電力提供と同時に福島の復興推進・地方創生」「自然エネルギーの普及」「安くて質の良いエネルギーの提供」などを掲げている新電力会社。主として太陽光発電で発電した電力を供給している。
https://fukunoshima.co.jp/
Q:報道関連の話もありましたが、このところFIT価格の下落以外にも、ネガティブなニュースが多いです。太陽光投資物件の販売会社として、伝えられることはありますか?
もうひとつ言えるのは太陽光が40円台から14円になっていくにつれて、販売業者が淘汰され減っているのが現状。最初は太陽光は利益が出そうだし投資家にも喜んでもらえるということで、いろいろな異業種から参入してくる人が多かった。そうなったら、みなさんが想像している通り開始当初はいろいろな人が参入した結果、業者さんの中にはまだまだ太陽光の設置について未熟な人もいたと考えられます。
松本社長
松本社長
弓削部長
Q:施工業者さんのレベルが上がり、洗練淘汰されてきたというお話をいただきましたが、そのほかに昔の物件とFITが下がった後に作られた物件に違いはあるのでしょうか?
松本社長
Q:業者さんや販売会社が経験を積んだ結果、部材も土地の仕入れも精度が上がったということですね。
松本社長
太陽光はFITの買い取りが終わったあとにも投資の面白さがある
Q:先日開催された「資産運用EXPO」でも多くいらっしゃいましたが、今から太陽光投資を始める方や買い増しされる方へメッセージをお願いします。
弓削部長
太陽光投資の表面利回り維持に重要な3つのキーワード
Q:表面利回り10%の話に戻します。現在までも部材コストは以前より下がっているし、設置費用もあらかた下がってきました。そうなると、これから認証を受けて販売するFIT14円物件の表面利回り10%以上を、どのようにして維持していくのでしょうか?
松本社長
松本社長
Q:もちろん日照条件などいろいろ関わってくるとは思いますが、蓄電池の件は出力抑制の部分にもプラスに作用してくるので、投資家にはリスクヘッジの1つのツールとしてもご理解いただけるのではと思います。
(*1)逆潮流とは
太陽光発電所、自家発電設備などから連系された電力会社の系統に電気を流すこと。電力会社から一般家庭や法人などの需要家へ送電することを「潮流」ということから、電力会社へ向かって流れる電気を「逆潮流」と呼ぶようになった。
脱FITが進むと「FIT価格で電気を売る=太陽光投資」でなくなる
Q:過積載物件に蓄電池を試験完了後に搭載する。そのような汎用性を考えられるような物件が、FITが14円に下がっていっても利益を埋める物件であるということですね。
松本社長
Q:太陽光投資の出口戦略として、ひとつはダイレクトパワー。もうひとつが欧州、とくにドイツで主流になっている直接電気を買い付ける方法(P2P)になるということですね。
弓削部長
(*2)ダイレクトパワーとは
メディオテックグループの株式会社ダイレクトパワーが開始する、ブロックチェーンをはじめとする最先端IT技術を駆使した新電力サービス。サービスインは2019年4月の予定。サービスイン当初は一般家庭向けにJEPX(日本卸電力取引所)から仕入れた価格で電気を販売する事業を、2019年11月予定で今年発生する一般家庭の卒FIT太陽光発電から電力を買い取るサービスを始めます。
そののち、脱炭素社会や「RE100(*3)」を意識した法人様向けサービスとして、FITに依存していない(FIT依存20年間を終了したものも含む)再生可能エネルギー発電所から電力を買い取り、買い取った電気を法人様へ供給。その証明にブロックチェーンを用いるサービスを準備中です。ブロックチェーン技術を採用することで、さらにその先のP2P取引へも繋げられる可能性を持ちます。
詳細・お問い合わせはこちらから
https://direct-power.jp/
(*3)RE100とは
R(Renewable) E(Energy) 100(persent)の略で、イギリスに本拠地をおくNPOが主導する環境イニシアチブ。事業で使用する電力を再生可能エネルギー100%を目指す企業連合で、日本企業では「SONY」「リコー」「富士通」などが、海外の有名企業も「バンク・オブ・アメリカ」「アップル」「マイクロソフト」などが名を連ねている。全世界で160社以上(2019年2月現在)が参画している。
太陽光投資の表面利回り計算は20年。でも20年後も運用可能
Q:投資用太陽光の卒FITは2032年からとなると、あと13年あります。ダイレクトパワー、蓄電池のさらに先が出てくる可能性がありますね
松本社長
Q:20年経ってFITが終わっても、電気を買い取る業者は絶対いますね。
松本社長
Q:FIT開始(2012年)当初は、その考えはまだなかったですよね。「20年経ったらどう撤去しよう」とかいう話くらいで。
弓削部長
Q:20年のFIT買い取り期間後、さらに10年間であれば、電気事業者が10円でも8円でも、5円でもいいから買い取れば、投資家には利益がでますね。
松本社長
弓削部長
松本社長
Q:太陽光発電所の土地が売買なのか、賃借なのかでも変わってくると思いますが、メディオテックの物件の土地は売買が多いですか?
弓削部長
松本社長
Q:地主さんが必要としていないのであれば、そのまま再契約ということができそうですね
弓削部長
松本社長
Q:太陽光投資が始まった当初の「20年後どうしよう」という悩みを持つ必要がなくなりますね
そのケースは相対で高圧の価格を決める。例えば「普通の電気料金を1kWhあたり15円でやります。ただこれは太陽光なのでプラス2円ください」という契約を結ぶ。それで成り立つんですね。そのビジネスモデルが増えてきています。パンフレットには「FITに依存しない」と明確に書いてありましたから。
松本社長
卒FIT, 脱FIT, PPA…新ビジネスから見えてくる太陽光投資の未来
Q:そうなるとFITがなくなっても太陽光が、投資用商材として残る可能性は十分にありうるということですね
松本社長
ーー投資物件の支払いが終わったあとは、売電分が全て収入になりますからね。
松本社長
「20年以降どう稼げるのか?」ということを、大人になって巣立っていく発電所を楽しみにしてくださいということをお伝えしてます。出口戦略としてダイレクトパワーの話にも繋がってくるので、お客様は非常に興味を持っていただいているけど、具体的には「まだ待ってください」といっています(笑)。結構期待していただいていますね。
弓削部長
Q:20年後と言わず、FITが7、8円まで落ちてくるまで間に、いろんな方法で投資商品として様変わりして行くイメージですね。FIT14円というよりも20年後以降の出口戦略の方が、今運用している人にとっては気になるところですね。
弓削部長
松本社長
ーーFITが14円に下がることよりも、もっと重要な情報をお聞きすることができました。ありがとうございました。
編集後記
『投資用太陽光のFIT価格14円へ』について、いかがでしたでしょうか。おおかたの予想を超えて「FITが14円に下落」というインパクトが先行してしまい若干萎縮した部分はありましたが、物件価格の下落や部材の改良、20年後の出口戦略が見えてきて、FIT下落以外にも注目するべき点があることがわかりました。災害などの突発的リスクは別として、これだけ先が見えて未来のあるストック型の投資商材は他にないと思います。それはFIT価格が下がってきたからこそ、生まれてくる新しいビジネスチャンスでもあります。
物件評価額の変動や空室リスクを負う可能性がヘッジできない不動産投資などよりも、未来や社会貢献度があるとも言えます。「太陽光投資=20年間の売電収入」だけで投資をお考えだった方は、ぜひこの機会に見直していただければと思います。
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