太陽光発電投資は副業になるのか〜会社への申請は必要?

太陽光発電投資に興味をお持ちの方でも気になる部分の1つが「太陽光発電投資は副業になるのか」ではないでしょうか。
会社勤めの方にとっては副業をするのは多少なりともリスクを感じるものですが、実際に太陽光発電投資を個人で行っている方はたくさんいらっしゃいます。というわけで今回は太陽光投資が副業にあたるのか、そしてその場合会社に報告する必要はあるのかについてお伝えします。
会社との関係を親密に保つためにも、太陽光発電投資を行う前に勤務先の就業規則を確認することをお勧めいたします。
目次
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そもそも「副業」とは
実は、「副業」という言葉には明確な定義がありません。一般的には「本業以外で収入を得ている仕事」が副業とみなされることが多いです。
また副業かどうかを判断する要素として、確定申告の際の所得区分が給与所得や事業所得に該当する場合には副業だとされるケースがあります。
確定申告の際の所得区分は全部で以下の10種類に分けられます。
【所得区分一覧】
所得区分 | 所得の内容 |
---|---|
給与所得 | 会社から振り込まれる給与 |
退職所得 | 退職時に受け取る |
利子所得 | 公社債や預貯金の利子によって |
配当所得 | 株式の配当など |
不動産所得 | 不動産などの貸付けによって |
事業所得 | 事業によって |
山林所得 | 所有していた山林の売却によって |
譲渡所得 | 事業用固定資産や家庭用資産の売却によって |
一時所得 | 賞金や満期保険金など |
雑所得 | 上記9つの所得に該当しないもの |
このうち勤務する会社から振り込まれる給与所得や、事業を始めることで得られる事業所得が複数あると副業していると認識されやすいということになります。
太陽光発電で得た収入はどの所得になるのか?
では太陽光発電で得た収入はどのような所得区分になるのか。この区分は実際に投資を始めた際の確定申告でも知っておく必要があるのでここで紹介いたします。
家庭用と産業用で所得区分は異なる
太陽光発電の場合、家庭用と産業用で所得区分が異なります。
その理由は主に電力会社による買取方式の違いが挙げられます。
家庭用の場合は発電した電力のうち家庭で使用し余った分を買い取ってもらう余剰買取の形をとり、産業用は発電した電気全てを買い取ってもらう全量買取が適用されています。
家庭用 | 産業用(投資用) | |
---|---|---|
パネルの出力 | 10kW未満 | 10kW以上 |
買取方式 | 余剰買取 | 全量買取 |
▼家庭用太陽光発電と産業用(投資用)太陽光発電の詳しい違いについてはこちらの記事に記載しています。
家庭用太陽光発電での収入=雑所得
家庭用太陽光発電は10kW未満であることがほとんどのため、通常は余剰電力を売電して収入を得ています。
この場合は発電した電気を使用し残った分だけを売っているため、売電することを主たる目的としていないと判断され雑所得扱いになります。つまり、自分たちが生活するのに必要な電力を太陽光によって発電し、たまたま余剰分の利益が出たと判断されるのです。
産業用(投資用)太陽光発電での収入=事業所得
産業用(投資用)太陽光発電を行っている場合は全量売電していることになり、電気を売るために発電所を所有しているという認識をされます。したがって個人で行っていても以下の条件のどれかに当てはまれば事業所得とみなされます。
【事業所得とみなされる条件】
- ①総出力(=発電所に設置しているパワコンの合計出力)が50kWを超える太陽光発電設備(高圧・特別高圧)を設置している。つまり電気主任技術者を監督者として選任しなければいけない場合
- ②土地の上に設置した設備の周りをフェンスなどで囲っている
- ③土地の上に設置した設備の周りの除草や除雪を行っている
- ④建物の上に設置した設備上の除雪を行っている
- ⑤賃借した建物や土地の上に設備を設置した
▼①に該当しない50kW未満の場合でも
これらのいずれかが当てはまる場合、全量売電によって得た収入は事業所得扱いになります。
逆に言うと個人で全量売電しているにもかかわらず雑所得と見なされるのは、50kW未満の出力の設備を所有している建物の上に設置し、さらに管理を一切していない場合のみとなります。
しかし投資として発電所を持つ場合には設備のメンテナンスが不可欠であり、ほとんどのケースで産業用(投資用)太陽光発電で得た収入は事業所得とみなされると考えて問題ありません。
働き方改革について
太陽光発電投資での収入が事業所得となると、一般的な認識として「副業」にあたるので会社で禁止されているかもしれないと思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし近年、働き方改革の一環として副業・兼業の解禁とが注目されています。
働き方改革では「柔軟な働き方」というキーワードの下、新卒で入社した会社に退職まで勤め上げるという昭和的な価値観が薄れつつあります。単に長時間働けば評価された時代から、成果や役割など労働の結果や質が評価される時代となってきているのです。
こうした価値観の変化に伴い、副業・兼業も認められるようになってきました。
副業禁止の時代は終わる!
以前厚生労働省の作成したモデル就業規則では、労働者の遵守事項に「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定があり、原則として副業・兼業を禁止していました。
ところが2018年1月、厚生労働省では、副業・兼業の促進についてのガイドラインをまとめました。企業の対応として「裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である」としており、副業・兼業を解禁する方向となっています。
また副業・兼業を禁止したり許可制としている企業に対し、「労働時間以外の時間については、労働者の希望に応じて、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが求められる」としています。
新たなモデル就業規則
新たに作成されたモデル就業規則では、労働者の遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、副業・兼業について下記の規定を新設しています。
副業・兼業
第67条
1 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合
(厚生労働省「モデル就業規則について」より)
あくまでもモデル就業規則であり会社に対してこの規定を強制するものではありませんが、今後働き方改革の進展に従い、これを参考にして規定を設ける企業も多くなるのではないかと思われます。
以下でモデル就業規則の規定をわかりやすく見ていきましょう。
第1項:労働者は副業・兼業できる!
第1項では、労働者が副業・兼業できることを明示しています。裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由であるとしていますから、原則として、副業・兼業は認められます。
第2項:副業するなら会社に届け出よう!
ただし、第2項で、労務提供上の支障や企業秘密の漏洩を防ぐため、また労働者の長時間労働を招くものとなっていないかなどを確認するため、会社へ届出を行うことを規定しています。同業他社との兼業や働きすぎを防ぐための決まりですので、この届け出によって太陽光発電投資を規制される可能性は低いと考えられます。
第3項:こんな副業はアウト!
第3項では、労働者の副業・兼業について各企業の制限が許される場合の例が示されています。しかし解説において「就業規則の規定を拡大解釈して、必要以上に労働者の副業・兼業を制限することのないよう、適切な運用を心がけていただくことが肝要です」と会社にくぎを刺していることから、副業・兼業の制限はかなり限定的になるのではないでしょうか。
法人化する場合は会社への報告が必須
発電所をいくつか所有するようになると法人化を視野に入れる方もいらっしゃると思います。自分で会社を立ち上げる場合、就業規則の副業・兼業規定以外に注意したいことがあります。
というのも通常、法人を作ると社会保険(厚生年金と健康保険)に加入しなければなりません。従業員がいなくても社長1人で加入する義務があります。この場合、勤務先の社会保険と自社の社会保険の2つにおいて加入義務が生じることになります。
その際には年金事務所への届出が必要です。勤務先からの収入と自社における役員報酬を合算して社会保険料を算出する必要があるため、この場合には会社への申告が求められるでしょう。
編集後記
副業がますます一般的なものになっている現代ですが、太陽光発電投資を行う際には十分に会社とコミュニケーションをとり気持ちよく投資を始められたら良いですね。
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