働き方改革はいったいなにが変わるのか〜新型コロナウイルスで加速の予想

2018年以降、多くの企業で「働き方改革」が実施されています。働き方改革と聞くと、ノー残業デーが導入されたり、育児休暇が充実したりするといったイメージが強いですが、2020年の新型コロナウイルスパニックでさらに加速することが予想されます。
今回は働き方改革の3つの柱と企業の具体的な事例を用いて、理解を深めていきます。
目次
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働き方改革「3つの柱」
厚生労働省は2018年7月6日に「働き方改革関連法」を公布し、2019年4月1日に施行しました。これは働き方改革を推進することを目的として、労働基準法などの関連法をまとめて改定するためのものです。
働き方改革には大きな3つの柱(目的)があります。
- 長時間労働の是正
- 正規・非正規の不合理な処遇差の解消
- 多様な働き方の実現
「長時間労働の是正」は文字通り、時間外勤務の時間を減らしたり、有給休暇をきちんと取得できるような仕組みを作っていくものです。
「正規・非正規の不合理な処遇差の解消」は正規雇用と非正規雇用の所得差などの格差を減らしていくためのものです。
「多様な働き方の実現」は副業やテレワークなどの導入を促進させるためのものです。奇しくも2020年は、世界的な新型コロナウイルス禍において、最後に上げたテレワークが急速に拡大しました。
これらのような目的のために労働基準法などの関連法が改定されたため、企業はこれに従わないと法律違反となってしまいます。労働基準監督署は予告なしで調査に来るため、これらの法律を守っていないとすぐに見つかってしまうのです。
具体的な導入事例
現在でも多くの企業が働き方改革に積極的に取り組んでいます。
国内大手商社・伊藤忠商事は長時間労働の是正を行いました。夜遅くまで勤務するのは当たり前のイメージがある商社にも関わらず、17:00から22:00までの勤務を原則禁止、22:00から翌朝5:00までの勤務を完全に禁止にしたのです。
目的としては仕事の効率を高めることにあるようですが、結果的に残業時間を10%以上も削減することができました。
スウェーデン発の家具メーカー・イケアジャパン株式会社は「全社員正社員化」を実施しました。社員の7割を占めるパートを短時間勤務の正社員に転換し、福利厚生、厚生年金・健康保険への加入などを正社員と同じ待遇にしたのです。
また有期雇用が廃止となり、65歳定年制も導入されることによって今まで非正規雇用として働いていた従業員への待遇がより良いものとなったのです。
サランラップやヘーベルハウスで有名な旭化成株式会社では、フレックスタイム制を導入して、フレキシブルな勤務が可能になるように各種制度を整備しました。具体的にはコアタイムの短いフレックスタイムにすることで、仕事と介護を図る社員が柔軟に働けるようになりました。
このように、多くの企業で働き方改革が盛んに行われています。今後は人手不足がより深刻になってくることが予測されるため、各企業が収入面だけでなく、福利厚生の待遇面でも競争していく必要があり、さらに労働者が働きやすい整備がされていくことが予想されます。
複線型キャリアパスってなに?従来とはどう違う?
近年は加速度を増す技術の進歩により、それに合わせて時代の変化も著しくなってきました。このような時代にいる若者は、従来のサラリーマンとは異なる価値観で「仕事」というものを捉えています。
ここでは単線型キャリアパスと複線型キャリアパスについて紹介し、みなさんのキャリア設計の役に立てればと思います。
単線型キャリアパスはもう古い
単線型キャリアパスとは、新卒で入社した会社に定年退職まで働き続けるキャリアパスのことを言います。終身雇用が前提となっており、社員が入社してから昇給を図るには、主任、課長、部長という風に出世をしていく必要があります。このような出世コースが固められているのが単線型キャリアパスの特徴です。
これは会社側にも労働者側にもメリットがあります。会社側としては、労働者が長く勤めてくれると決まっていれば、時間とお金をかけて教育に当たることができます。労働者側としても、1度入社をしてしまえば、定年まで仕事をもらえるので安定した所得を得ることができます。
しかし、そのような単線型キャリアパスを良しと思っていない若者が近年増えてきているようです。理由としてあげられるのは前述したように時代の変化が著しいため企業がすぐに潰れてしまう危険があるということや、若者が自由度の高い仕事を求める傾向が強くなってきたことなどがあげられます。
このようなことから、2019年4月に経団連の中西宏明会長(当時)は「経済界は終身雇用を守れない」といったコメントも残しています。
今後は複線型キャリアパス!
それに対して複線型キャリアパスとは、企業に入った人が自らの意思・志向に基づいてキャリアを組み立てることができ、個人の能力や個性を最大限発揮できる仕組みになります。このような人事制度のことを複線型人事制度と言います。
典型的な例でいうと、総合職、一般職、専門職などが用意されている企業です。これは総合職に入社した人が、管理職に出世するようなジェネラリストではなく、専門性の高いスペシャリストとして活躍したいと考えた場合に、チャレンジできるような環境がある企業であることが多いです。
これによって、自分にあった勤務地で自分にあった仕事内容を選ぶことができるようになって、社員のモチベーションアップとなり、最終的に社内の活気に繋がっていきます。ひとりひとりのライフスタイルを尊重することが会社のためになるのです。
副業すると何か変わる?副業に必要な知識とは?
「働き方改革 大きな3つの柱」でご紹介したとおり、副業を解禁する企業が増えてきています。その流れに乗って、スキルアップや収入源を増やすことなどを目的として新たに仕事を始める方が増えてくることが予想されます。これはすぐ上で紹介した複線型キャリアパスの変化球だと考えます。
最終的には副業を本業にシフトして独立、または副業で身に付けたスキルを活かして転職することなどが考えられるからです。「乗り換え型キャリアパス」といっても良いかもしれません。
しかし、日本には様々な法律が存在します。ここではサラリーマンが副業を始めるに当たって、頭に入れておくべき法律やルールをご紹介していきます。
ルールを守って副業すること
公務員は副業が大きく制限されます。株式会社などの一般的な会社(営利団体)で報酬を得るような仕事をしてはいけないため、学校の先生をやりながら夜にアルバイトをするといったことは禁止されています。
ルールを知らないで副業を始めてしまうと、本業での自分の立場が危うくなってしまう恐れがあります。なので、事前に十分に知識を入れ、社会的にルールを守って正しく副業をすることが重要です。
会社への申請
まずは会社からの許可の取得についてです。完全自由制、届出制、許可制に分けることができます。
- 完全自由制…会社が副業に関して基本的に関与しないものであり、文字通り完全に自由に副業をすることができます。
- 届出制…社員に副業に関する注意点を認知させた上で事前に届出を出してもらい、社員の状況を確認しやすくするものです。
- 許可制…事前に会社の許可を得てから副業をしなければならないものではありますが、ニュアンスとしては副業NGなので企業側が許可の手続き等を定めていない場合があります。
勤務先の企業がどの種類なのかを確認した上で、適切な申請を行なってください。
副業選び
仕事を選ぶ際にも注意が必要です。それは、「競合避止義務」です。これは企業の利益が圧迫されてしまったり、機密情報が漏えいしたりすることから企業を守るための法律です。本業の企業と副業先が競合である場合は、副業の許可が得られないことがほとんどになります。
たとえ副業が許可されたとしても、勤務先で企業の機密情報の漏洩が発覚した場合には処罰を受けることになるので、競合他社を選ぶことはNGです。
確定申告について
では実際に副業で所得を得た場合、その金額に伴って納税を行う必要があります。それが確定申告です。これは年間を通して所得が20万円を超える場合は必要になりますがそれ以下であれば提出する必要はなく、住民税のみの申請となります。
確定申告は2月15日から3月15日という限られた期間に税務署に必要書類を提出しなければなりませんが、現在は郵送やオンラインでできるものがあるので詳しくは調べてみてください。期限に遅れてしまうと無申告加算税を取られてしまい、支払いが増えてしまうので注意してください。
編集後記
今回は副業をする前に知っておくべき知識を紹介してきました。社会人として信用を失わないように、ルールを守って副業を行なってください。
働き方改革で副業を促進したり、複線型の人事制度が評価され始めるなど、労働者の意向に沿った働き方ができるようになってきています。改めて自身のキャリアについて考えてみてはいかがでしょうか。
働き方改革の3つの柱とそれに沿った企業の改革について書いてきました。働き方改革とは一口に言っても様々な取り組みがあることを感じていただけたらと思います。
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